2010.5.19

「真宗本廟(東本願寺)御修復工事、仮設屋根工事について」

(株)大林組大阪本店建築事業部
生産技術部計画第一課長
奥田 和弘 氏

京都市下京区の東本願寺。真宗本廟両堂等御修復工事は、その境内にある「御影堂」「阿弥陀堂」それぞれについて非解体修理を順次施すもので、屋根瓦の葺き替え、木部損傷箇所の修復、錺金物・漆喰塗りの修復・美装などが行われている。

また、素屋根とは、建物全体を覆う屋根架構のことで、修復作業中の風雨を防ぎ、建物が保護された状態で作業を行える環境を作り出すことによって、より安全で効率的な御修復工事を実現するものである。

今回は、世界最大級の木造建築物に鉄骨造の素屋根(幅員79m、高さ51m)を架設した素屋根スライド工事について、御影堂素屋根・阿弥陀堂素屋根の二例を紹介する。
【御影堂素屋根新設工事】(平成16年2月~平成16年12月)
御影堂を覆う素屋根の総重量は約1,800t、長さは約91m。6ステップにわたるスライド工法の採用により、御影堂上空での鉄骨作業を回避し、安全性を確保しながらの施工を実現した。

スライド工法とは、レール上にすべり支承(ローラー)を有する対象構造物を構築して、牽引ジャッキ等で横移動させる工法。この工法は、鉄骨建方作業の範囲を限定することが可能で、安全上直接建方が行えないエリアに架構を構築する場合や、既存の構造物をそのまま移動する場合などに適用されることが多い。

ただし、今回はスライド対象となる素屋根の断面形状が非対称であるために、柱脚部に発生する大きな水平反力を処理する必要があり、ガイドレールと水平反力用すべり支承を併設するスライド機構を構築した。スライド結果は、牽引反力が10~30t(摩擦係数約2%)、牽引速さは約1mm/秒、スライド工法による鉄骨建方期間は4ヶ月であった。

【阿弥陀堂素屋根移設工事】(平成21年1月~平成21年9月)
隣接する阿弥陀堂の御修復工事のために、御影堂の素屋根を移設した。移設する素屋根の総重量は約1,500t、移動距離は約67m。連続牽引型スライド工法の採用により、この移動(移設)を約半日で完了した。

高速かつスムースなスライドを実現するため、2台のジャッキ牽引量の差が常に10mm以下となるようにコンピュータで変位差制御を課している。スライド結果は、牽引反力が約40t(摩擦係数約3%)、牽引速さは約8mm/秒、実牽引時間は2時間余りであった。

スライド当日はセレモニーが開かれ、放送局・新聞社などの報道陣や大勢の見学者が素屋根の移動を見守るなかで、途中点検も含め約3時間でスライド工事を完了した。

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