2023.9.13

「築地本願寺の変革」
西本願寺 代表役員執行長
安永 雄彦 師

私はかつて銀行員だった。大阪やロンドンで勤務し、ケンブリッジ大学への留学も経験した。バブルの爪痕が残るなかで不良資産の処理も担当した。46歳で銀行を辞め、コンサルタント業などを経て、僧侶になった。

なぜ坊さんになったのか、とよく聞かれる。組織で働くことには良い面もあるが、陰の部分を背負わざるを得ない面もある。その陰の部分を払拭するためだったのかもしれない。何より、人生の後半を生きがいのある人生にしたい、という思いから仏教の勉強を始めた。

宗教の世界に入り、築地本願寺の改革に携わった。人口の減少、檀家制度の崩壊などによって、寺を取り巻く環境は大きく変化した。支え手をなくした寺は、そのままでは生き残れない。ダーウィンが言ったとされる「環境変化に適応できるものだけが生き残る」という言葉を胸に改革に臨んだ。

私が着任する前の築地本願寺は、毎年約2億円の赤字を出していた。7年間の改革を経て、現在は黒字に転じた。「人々の生活に寄りそう」ために、「『寺と』プロジェクト」を立ちあげ、さまざまな取り組みを進めてきた結果だ。

境内にインフォメーションセンターをつくり、人々の多様な相談に応じた。カフェや土産物店も設けた。カフェの18品目の朝食は評判になり、毎朝、行列ができている。また、「人生サポートサービス」として、銀座に「GINZAサロン」を設け、カルチャーセンターも始めた。お寺に興味を持ってもらう活動として、うまく軌道に乗った。都会のお墓不足に対応するための合同墓の運営や、若者向けの結婚相談所も始めて、たくさんの利用者に喜ばれている。

先行きが不透明な「VUCA(ブーカ)」の時代を心豊かに生きるために、大事なことが五つある。
(1)人生は思うようにならないと諦める。
(2)煩悩にとらわれている自分も含め、ありのままの自分を受け入れる。
(3)ご縁のある他者に、常に感謝する。
(4)積極的に挑戦して失敗し、失敗から学ぶ。
(5)「一日一生」と思って毎日を生き切る。

大前提として大切なのは、自分の人生を主体的に生きることだ。「今この瞬間に心を込めて生きる」。私は毎日、自分にそう言い聞かせている。

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