2012.2.1

― 新会員スピーチ ―
「ちょっと劇的な現場のお話」
PLANET Creations 関谷昌人建築設計アトリエ 代表
関谷 昌人 君

私は建築家という仕事をしております。最近はTVの「大改造!! 劇的ビフォーアフター」で私の事をご存知の方もおられると思います。本業は住宅や商業施設など様々な建築の新築の設計ですが、TV局に頼まれて時々このような仕事もさせていただいております。

TVという世界は独特で、私共撮られる側の視点から見ますと表現の方法になかなか興味をそそられる事がたまにございます。この番組は、古くて問題をかかえた住宅の住人が「匠」と呼ばれる「建築家」にその解決を依頼し、最後は劇的に変わった自分の家を見て感激のうちに終わる、という定番のスタイルを持つ建築バラエティともいえる番組です。

一枚の簡単な平面図でディレクターが住まい手にOKをもらいスタートすると、いろいろ普段見ることが出来ないTVの表現の世界が展開します。ディレクターはカメラが回ってコメントしている時は何でも撫でてくださいと言います。TV画面を通し視聴者から見た時、その方がずっと伝わるからだそうです。また時間のトリックも時々使います。異なる日時の撮影でも放送では数分ということもありますので、服や靴、メガネ、鞄、髪型などを合わせなければなりません。何日も離れた映像が一つに繋がって見える訳です。「問題の解決」がリフォーム番組の根源ですので、家を解体した時、そこに大きな問題が存在しなければなりません。京丹後の現場では半地下から水が噴き出し本当に困りましたが、ディレクターは「大変なことになりましたね」と言って目は嬉しそうでした。ただこうしたトリッキーな表現手法では、どうしても真実を表現できないものがあります。それは完成披露の時の家族のリアクションです。素人には絶対演技は出来ません。ビフォーアフターの最も重要な瞬間が失敗すると全てが水の泡になってしまいます。よく皆様から「あれはヤラセではないのか?」とご質問をいただきます。実は初めにディレクターが簡単な図面を見せて施主に説明した後は、完成披露の瞬間まで絶対に一度もその家族に現場は見せません。あの感動のシーンには何のトリックもありません。「TVという小さな画面を通して、いかに見る人にそのメッセージを正確に伝えることが出来るか」というディレクター達の強い意志を感じます。2時間番組を作るために彼らが現場のそばに5ケ月以上も泊り込んで撮ったそのテープは、ゆうに350時間を超えていたのです。

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