2013.10.23

「世界から、そして世界へ」
(株)東急文化村 代表取締役社長
升田 高寛 氏

東急電鉄の実質的な創業者は五島慶太だが、私の父(升田幸三・実力制第4代名人)はその五島から将棋の指南を迫られた、と聞いたことがある。だから私は、今の仕事に不思議な縁(えにし)を感じている。

五島慶太のあと東急グループの経営の舵をとったのは、子息の五島昇だった。「Bunkamura」は、彼が「至高の芸術と洗練されたお客様の融和の場をつくろう」と25年前に立ちあげた。当時の日本には珍しい、美術館・コンサートホール・舞台などの複合文化施設だった。そこには、器をつくるだけでなく、将来に向けて、次代の若者たちに希望の灯を発信しながら、まちづくりを進める東急グループのDNAが受け継がれていると思う。

例えば、「コクーン歌舞伎」が挙げられる。伝統を守りながら、時代に合わせて、人の心に訴えかけていこうとする取組みだ。昨年亡くなった中村勘三郎さんが10年ほど前に「歌舞伎はこのままいくと50年、もたない。歌舞(かぶ)かなくなっちまった(「常識外のことを受け入れる精神」「挑戦する心」が希薄になってしまった、の意味か)」と心配し、「出雲阿国が現代にいたなら、舞台でエレキギターを弾いたんじゃないか」と言い始めたのがきっかけだった。勘三郎さんは新しい歌舞伎をつくりあげ、Bunkamuraで上演した。私たちはそれを全力で応援した。「コクーン歌舞伎」を始めてから、銀座の歌舞伎座に来るお客様の層が変わった。逆に、歌舞伎座のお客様が「コクーン歌舞伎」を観に来てくださるようにもなった。勘三郎さんは見事に市場を掘り起こしてみせたといえる。

昨年は「渋谷ヒカリエ」というビルを建て、約2,000席もあるミュージカルホールをつくった。ここからも、新しい文化を発信していく。

世界から日本へさまざまなものを持ち込み、楽しむ時代は、終焉に向かっていると思う。日本にある素晴らしい文化を、世界へどんどん発信していく時代がやってきた。

発信すべき素晴らしい日本文化の根っこは、京都にいっぱいある。世界への発信は、京都の力を借りずには、できない。開発の進む渋谷から、世界を牽引する文化発信の仕組みをつくるために、ご協力、ご指導をいただきたい。

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