2016.9.7
― 新会員スピーチ ―
「おなかと健康長寿」
京都府立医科大学 学長
吉川 敏一 君
昔から、便秘や下痢など、お腹の調子が悪いと肌が荒れるとか、何となく身体の具合がすっきりしないことが自覚されていました。しかし最近の研究によって、お腹の調子をコントロールしている腸内細菌が色々な病気を引き起こしたり、逆に病気を予防したり、大きく私たちの健康を左右していることが明らかになってまいりました。
私達のおなかには腸内フローラと言われる100兆個の腸内細菌が住み着いています。この腸内細菌たちと私たちは共生しているのです。これらの細菌が、がんや糖尿病、肥満などの生活習慣病を引き起こしたり、逆に免役能を高めて感染防御などに役立ったりしています。
ところが、今まではどのような細菌がそれぞれの人の腸内に居るのかが詳しくわかっていませんでした。便を培養して、増殖してきた細菌だけを同定していたからです。しかし、ほとんどの菌が培養不可能であったため、その種類を正確に決めることができませんでした。ようやく最近になって、細菌のゲノム情報を網羅的に測定する手法が開発され、その種類が詳しくわかってまいりました。
その結果、ある種の悪玉の腸内細菌は関節炎を起こし、肥満や大腸炎を誘発する事が証明されました。逆に、善玉の菌は大腸炎を改善し、がんや糖尿病などの生活習慣病を予防する事が明らかになりつつあります。いよいよ善玉菌カプセルなどで、良い腸内細菌を摂取し、疾病を治療し、予防する時代がやってきました。しかし、その治療が定着するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
幸い、これらの腸内細菌の種類や数は食事や運動、ストレスなどによって影響を受けることがわかってまいりました。善玉菌を投与する治療や予防法が確立するまでは、野菜や海藻類などに多い食物繊維、赤ワインや大豆などに豊富なポリフェノール、味噌やお漬物に代表される発酵食品、あるいはヨーグルトなどに含まれる乳酸菌などをたくさん摂り、運動やストレス解消などによって善玉菌を増やし、おなかの調子を整えて病気を予防しましょう。
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