2016.12.7

― 新会員スピーチ ―
「黒四について」
関西電力(株) 執行役員 京都支社長
井上 正英 君

黒部川は、北アルプスの立山連峰と後立山連峰の間を流れる峡谷で、非常に急勾配でかつ、降水量が多く水力開発に大変適しています。

大正期以降、下流から上流へ順次、黒部川水系の開発が進められてきました。黒部川第一にあたる柳河原発電所、黒部川第二発電所、黒部川第三発電所などが戦前、日本電力により開発されました。黒三では、仙人谷ダム建設の資材運搬ルートの開拓に当たり、隧道工事での高熱地帯との遭遇や、泡雪崩の襲来により多くの犠牲者がでるなど工事は難航を極めました。

戦後、昭和26年の電力再編により、黒部川の発電所とその後の開発が関西電力に引き継がれました。そして、日本経済復興の本格化による電力不足の深刻化をうけて、黒四の建設が決断されました。黒四建設の命運を握る、資機材運搬の大動脈である大町トンネルが破砕帯に遭遇し、工事は一時暗礁に乗り上げました。しかし、トップの揺ぎない意志と、関係者全員の不屈の精神と団結力、あらゆる学識と経験の結集によりこれを突破しました。そして、7年の歳月と、総工費513億円、延べ1000万人の労力を投入し、171名の尊い犠牲の上に「世紀の難工事」といわれた黒四は完成しました。この黒四は私たちに4つの宝物を残してくれました。ひとつは、今なお活躍する黒部ダムや発電所が、半世紀にわたり日本の経済成長を支え、電力の安全・安定供給をもたらしてくれました。二つ目は、後の社会資本整備の基礎となる、世界に冠たる土木技術を残してくれました。三つ目は、大自然と調和し美しい佇まいを見せる黒部ダムや資機材の輸送ルートは、年間100万人の観光客を集める観光施設となっています。

そして、何よりも私たちが大切に思っているのは、不屈の精神と強い団結力で困難を乗り越えた「くろよんスピリット」です。「くろよんスピリット」は、その後、原子力開発や、阪神淡路大震災からの復旧などを経て、困難に不屈の精神と強い団結力で立ち向かう「関電スピリット」として今も受け継がれています。

京都ロータリークラブ
〒604-0924 京都市中京区河原町通御池上るヤサカ河原町ビル4F
Tel 075-231-8738 Fax 075-211-1172
office@kyotorotary.com

Copyright (c) 2007 Rotary Club of Kyoto. All Rights Reserved. Site Map