2023.11.22

「『竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー』展の見どころ」
京都市美術館 学芸課 学芸係長
後藤 結美子 氏

京都市美術館は1933(昭和8)年に開館した。2020年のリニューアルを機に、通称「京都市京セラ美術館」として生まれ変わった。今年で開館90周年を迎え、記念展として現在「竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー」を開催している。
【会期:12月3日まで】

竹内栖鳳(せいほう/1864-1942)は、明治期から昭和初期までの京都画壇を率いた日本画家で、多くの弟子を育てたことでも知られている。「東の(横山)大観、西の栖鳳」と並び称されて、近代日本画界において存在感を示した。

彼は京都市美術館とも縁が深い。設立時には資金集めの会を発起し、開館後も評議員として美術館の運営に関わった。当館が栖鳳の作品の収集に注力している理由だ。

竹内栖鳳は画家として、若い時からその才を発揮した。明治時代になって西洋文化が日本に押し寄せるなかで、日本の絵画がどういう方向性をもつべきかを悩み抜いた。その結果として「日本画を一度破壊しなければいけない」とまで言い切って、新しい芸術を創りあげることに情熱を注いだ。円山四条派という流派で学んだ彼が、狩野派など別の流派や西洋絵画の様式を積極的に取り入れたのはその現われだろう。その姿勢は異形の怪物、鵺(ぬえ)に例えられ、「鵺派」と揶揄されたりもした。

彼は36歳の時、京都市と農商務省から依頼を受けて欧州へ渡った。パリ万博、各国の美術館や美術学校を視察して西洋文化を学んだ。

帰国後の作品「大獅子図」では、日本画の筆のタッチを残しながら、非常に写実的なライオンを描いている。金屏風に描いたので「金獅子」といわれ、人気を博した。彼は動物画を得意とし、「栖鳳の動物画はにおいまで表す」と評された。

軍鶏や犬や兎などの動物だけでなく、日常のありふれた風景、自然の姿を描いた作品も多い。その画題の見つけ方も栖鳳の魅力だと思う。

当館所蔵の重要文化財「絵になる最初」という作品も展覧会の目玉のひとつだ。さらに今回、作品の下絵を見られる展示もある。下絵には線を探した痕跡が残る一方で、本画は迷いのない筆致で描かれている点などが興味深い。

ぜひ会場へお運びいただき、栖鳳のエネルギーを間近で感じていただきたい。

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