2025.5.21
「少年非行の現状について」
京都府警察本部少年課
少年事件特別捜査隊長 谷村 彰裕 氏
近年の報道では少年犯罪の増加が取り上げられていますが、長期的な統計ではむしろ減少傾向にあります。特に1987年の5,274 件をピークに、2022年には283件と最少を記録しました。ただし、直近数年は増加傾向を示しており、特に窃盗や粗暴犯の割合が高まっています。しかし、歴史的に見れば依然として低水準であり、若者の規範意識は過去の世代よりも強いとされています。
SNSは現代の少年非行に深く関わっており、援助交際の募集や暴力事件への発展など、新たな非行の形態が生まれています。特定のハッシュタグを使った違法行為の勧誘が広がり、警察はサイバーパトロールを通じて警告を行っています。また、SNSを介して広域的に少年グループが形成されることもあり、こうした関係が深刻な暴力事件に発展するケースも見られます。講演では、SNSで知り合った少女たちの間で暴行事件が発生し、位置情報やオンラインの情報分析(OSINT)が悪用された具体例が紹介されました。
さらに、SNSが少年たちの「居場所化」している現状もあります。東京の「トー横」や大阪の「グリシタ」には、家出した少年少女が集まり、社会的な孤立を深めるケースが増えています。行政による対策が試みられていますが、取り組みは限定的な効果しか発揮できていません。また、最近のデータでは児童虐待の通報件数が増加し、児童生徒の自殺も過去最多を更新しています。これらの数値は、社会全体の関心の高まりによるものだけでなく、子どもたちが実際に追い詰められている状況を示しているともいえます。
依存症や非行からの回復には、「居場所」と「人とのつながり」が不可欠です。「植民地のネズミ、楽園のネズミ」の実験は、閉鎖的な環境では依存傾向が高まる一方で、仲間との交流がある環境では依存行動が減少することを示しています。少年犯罪の現場でもこの原理が実感されており、支援の在り方が更生に大きく影響すると言えます。社会が少年非行の実態を正しく理解し、どのように関わり、支援できるかを考える契機となれば幸いです。
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