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例会報告

2年目に入ったトランプ政権/世界と日本の選択

2026年01月14日

スピーカー: 大阪大学特任教授、元外務事務次官/ 藪中 三十二 氏

私は外務省に40年間在籍し、その前半は主に経済交渉を担当した。交渉において日本人は、相手に対してあまり激しく主張しない傾向がある。だが私は、日本はもっと堂々と発言しないといけない、という思いで交渉に携わってきた。退官後には「藪中塾グローバル寺子屋」を創立した。若者に、世界の舞台で堂々と自分の考えを展開し議論する大切さを伝えていきたいと考えている。

世界では今、いろいろな問題が起きている。その一つに、世界中がアメリカのトランプ大統領に振り回されている実状がある。今年1月2日、アメリカがベネズエラに攻撃を加えて、マドゥロ大統領を連行した。これは国際法上、認められない。だが、アメリカ国内で議論になるのは「戦争をする権限をもつ議会に相談したか。その意味で合法か」という点だけだ。トランプ氏は「戦争ではない。麻薬取引のバックアップで訴追されている人物に法執行をするため、アメリカに連れてきただけ」と説明し、それで収まっている。そんなことが横行すれば国際社会は成り立たない。

トランプ氏には、アメリカが南北アメリカ大陸をコントロールするという考え方があって、グリーンランドもその延長線上にあるようだ。要するに、彼が大切にするのは、自分の名前を歴史に残すことと、お金になるかどうか。ベネズエラの石油に関心はあっても、政治体制に関心はない。

そのトランプ氏とわれわれはどうつきあうのか。日本を取り巻く安全保障環境が今ほど厳しいことはないといわれる。中国が安全保障上の脅威である一方で、日本の同盟国・アメリカは、中国と共にG2(米中)で世界を運営していこうとしている。フィリピン、オーストラリア、インドなどに、中国と向き合うための同志国としての動きを期待するには難しい面もある。 高市発言については、質問した人が悪いという声もあるが、やはり総理の責任だと思う。中国が攻め込んで来たらアメリカがまず出て行く。その時に一緒に自衛隊が出動する。これが存立危機事態であって、アメリカが動かなければ始まらない話だ。だがトランプ政権は台湾にコミットしそうにない。こうした話を含めて、日本は世界の状況をおよそわかっていないように思える。クラブ・フォーラムではさらに、今後の世界情勢と日本が何をなすべきかについて考察を深めたい。

スピーカープロフィール

藪中三十二氏

1948年 大阪府生まれ、1969年 外務省入省。
1973年 コーネル大学をご卒業され、韓国、インドネシア、米国の大使館勤務、国際戦略研究所(ロンドン)主任研究員、アジア大洋州局長(六者協議首席代表)、外務審議官(経済担当・G8サミット・シェルパ・政務担当)等を歴任された後、外務事務次官に就任されました。2010年に外務省を退官し、現職をお勤めです。また、グローバル人材を育成する私塾「薮中塾グローバル寺子屋」を主宰されております。

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