例会プログラム

例会報告

「化学変化を起こすまちづくり」

2026年06月10日

スピーカー: 鎌倉市政策企画監/ 馬場 晋一 氏

私は豊島区や鎌倉市で、政策秘書を務めてきた。首長の構想を言語化し政策化する仕事だ。いかにして想定を超える化学変化を起こすか、戦略も練る。そのうえで自治体としては、変化して行くまちに合ったルールづくりが重要になる。

まちづくりについて、豊島区の例を紹介したい。かつて豊島区は財政がひっ迫し、このままでは将来、まちが消滅すると言われた。そこで首長は、持続可能なまちをつくる構想を打ち立てた。豊島区には漫画の聖地「トキワ荘」もあり、実は舞台芸術関係に強い文化的なまちなので、その強みを活かしてイメージを向上させ、稼げる自治体をつくって、まちを再生しようと考えた。

具体策として、まず駅の周りにあった公園に手を入れた。一つは芝生スペースとカフェのある公園に。治安の悪かった公園には、最上級の音響映像施設を完備し、毎週プロが出演するような野外劇場をつくった。もう一つは、ヘリポートのある防災用の公園にした。それぞれ個性ある公園に生まれ変わると、そこに人が集まるようになり、有名カフェが出店するなど周りの環境が少しずつ変わっていった。そうした事実が口コミで広がり、まちのイメージはどんどん良くなった。

次に、生まれ変わった公園をまちの人たちに委ねた。公園にカフェに出店してもらい、その売上の一部を、まちの人が担う運営協議会の費用にあてるというルールをつくった。

個性ある複数の公園をつなぐ電気バス「IKEBUS」も導入した。回遊することで、まち全体としての価値を高め、さらに広げようという考え方も市民の中に生まれた。うれしい化学変化が起きたのだ。点が線へとつながり、まちの賑わいと文化が経済を回した。

地元企業から、人気のある「IKEBUS」をブランドとして活用したいという話も出てきた。住民からは、自分たちで団体をつくって、まちの構想をしっかりと伝えていきたいとの声もあがった。そうしたファンの受け皿としてつくった「特命大使制度」には2000人もの応募があった。

スピーカープロフィール

馬場 晋一 氏
鎌倉市政策企画監

1964年 東京都豊島区にご誕生。メディア業務に携わられた後、1990年に豊島区へご入庁。
制度基盤整備、海外での技術支援、シティプロモーション、外郭団体運営を歴任後、特命組織のリーダーとして官民一体のまちづくりに取り組み、文化を軸にした都市再生を果たされました。2024年 鎌倉市に入庁され、市長政策秘書として政策企画監にご就任後、鎌倉市のまちづくり戦略に取り組んでおられます。また、同年まで立教大学諮問委員、続いて大正大学客員研究員も兼務しておられます。行政や諸団体を対象に自治体戦略をテーマにした講演を多数実施され、本年秋頃には東大生産技術研究所より共著の刊行を予定されています。