例会プログラム

例会報告

「文化財の継承に向けて」

2026年03月25日

スピーカー: 公益財団法人 京都古文化保存協会 常務理事・事務局長/ 後藤 由美子 氏

京都の寺や神社には素晴らしい文化財があるが、その多くは寺や神社が所有する。信仰の力で維持されてきたが、大戦後に財政基盤が失われ文化財の維持保全が危ぶまれた。修理費用の負担に苦しむ所有者は不完全な応急措置や修理を放置することもあった。

当協会は、戦後間もなく文化財所有者自らが結成したもので、その保存・修理や共通問題の解決にあたってきた全国でも先駆的な存在である。令和7年には団体設立77周年を迎え、京都府下380会員で構成される公益財団法人として文化財を後世に継承する活動を行う。文化財保護を達成するため9の事業の一つが特別公開で、貴重な文化財を年2回公開し、広く文化財愛護の普及を図り、拝観料は文化財の保存修理や運営費に充てている。

例として西念寺の涅槃図がある。当初室町時代の作とされたが、調査の結果平安時代後期の作と判明した。大変貴重なものと分かり修理を希望したが2000万円かかることが分かった。特別公開をきっかけに専門家に知られることとなり、2016年に重要文化財に指定され、2022年には4年がかりの修理を終えた。

京都府北部にある浦嶋神社にも重要文化財の絵巻がある。浦島太郎の御伽草子とは少し異なる場面や祭礼が描かれており、神社の縁起を示すものとして貴重で、物語性の高い地域性豊かな文化財である。社殿は140年以上が経過し、創建1200年の大改修を計画したが、費用が集まらず苦しい状況にある。

少子高齢化、過疎などにより、信仰や文化への興味が薄れ、地域に育まれた良き伝統文化が失われつつある。文化財は人々の価値観、地域文化などを伝える情報の塊であり、先人達が生きてきた証である。未来に継承するためには、良い修理を繰り返しオリジナルの情報を残していく必要がある。修理には多額の費用を要するが、国宝でも半額しか補助がでず、未指定では全額所有者が負担する。

祭や行事、風景の中にある神社や寺にある文化財は、心安らかに生活を営む上の支えとなる。当協会は、文化財が貴重な国民共有財産であることの理解を広め、これを国民全員で守る文化財愛護の普及啓発に努めていく。

スピーカープロフィール

後藤 由美子 氏
公益財団法人 京都古文化保存協会
常務理事・事務局長

1982年佛教大学文学部(仏教文化専攻)をご卒業後、京都府内の寺院、神社などの文化財所有者で組織する公益財団法人 京都古文化保存協会に勤務し、協会が推進する文化財保護事業、文化財愛護普及啓発事業を担当され

特に春と秋、年2回の非公開文化財特別公開については企画交渉から運営まで70回以上担い続けてこられました。その他、佛教大学非常勤講師、社会福祉法人錦会評議員、京都西山短期大学非常勤講師(2022年迄)等をお勤めです。また、京都府あけぼの賞、亀岡市生涯学習ゆう・あい賞「千登三子賞」を受賞されました。