
延暦寺は京都とともに育ってきた寺院です。お山の上には大小合わせて百近く建物があり、全山を総括する総本堂が根本中堂です。
比叡山を開いたお坊さんが伝教大師最澄です。19歳の若さで修行に入りました。小さな庵を立て、仏様を三体刻み、その前に小さな灯火を灯されました。「不滅の法灯」として1200年間灯し続けています。我々にいろいろなことを教えてくれます。
「誰がどうやって守っているのですか」と聞かれることがあります。あえて係を決めていないということが重要なポイントです。朝昼晩、気づいた者が常に確認をして対応していく。今日1日放っておいても大丈夫だろうというような心の持ちようは油断と言いますよね。そういう「油断」の語源でもあると言われております。
「伝統」は我々本来からの意味からすると「伝灯」ではないかなと思っています。新しい風、新しい油を足してこそ守れていく。延暦寺も常に新しいことにチャレンジしていこうと精進しています。
国家安泰を祈るためにスタートしたお寺です。最澄様の出した答えは人づくりでした。今でいう総合大学のようなものを目指されました。比叡山に行けば仏教のすべてのものが学べる。日蓮宗の日蓮聖人、浄土真宗の親鸞聖人、浄土宗の法然上人、臨済宗の栄西禅師、曹洞宗の道元禅師、時宗の一遍上人が学び、修行され、それぞれ独自の一宗一派を開いていかれました。日本仏教の母山と言われているゆえんです。
人づくりをする上で修行も大変重要です。厳しさを例えて「掃除地獄」や「回峰地獄」、おつとめでこもり切りになる「看経(かんきん)地獄」と言っています。千日回峰行は都合7年かけて1000日歩きます。今歩いている者は来年700日目が終わりますので、9日間飲まず食わず、眠らず横にならず、という修行に挑みます。
根本中堂は平成の大改修のため、中でお参りをしていただくことができませんが、一隅会館(萬拝堂)に御前立のお薬師様と「不滅の法灯」を別安置しています。間近でご参拝できる貴重な機会ですので、どうぞお越しいただければと思います。
スピーカープロフィール

今出川 行戒 師
比叡山延暦寺 南楽坊住職
昭和52年得度受戒、昭和63年四度加行。 平成2年より比叡山での3年間の籠山行へ入行、その間、百日回峰行、常座三昧等を修行されました。平成5年に籠山行を満行され、同年に延暦寺南楽坊住職にご就任。平成15年より3年間、横川 元三大師堂当執事を勤められました。その後、平成24年より天台宗へ出向され、10年にわたり祖師先徳鑽仰大法会の事務局幹事、平成28年より延暦寺責任役員副執行参拝部長を4期歴任、令和6年5月より責任役員副執行教化部長を勤められて現在に至られます。