
臨済宗円覚寺派管長・花園大学総長の横田南嶺老師は、「禅の教えに学ぶ」と題し講話された。近年「Zen」という言葉が広く用いられるようになり、禅への関心が高まっているが、一般に思い浮かべる庭園や茶道などは、鎌倉時代に禅が伝わった当初からあったものではなく、日本の中で後に形づくられたものであるとされた。
禅の初祖は達磨大師とされるが、禅は達磨を教祖として拝むものではない。尊いものは外にあるのではなく、「あなたの心が仏」であるという教えに立つ。仏を外に求める教えとは異なり、自らの心そのものに仏性を見るところに特徴があると説かれた。また、その心は姿形がなく、それでいて世界に満ちあふれているものであると示された。
この教えは唐代において説かれ、当時としては画期的なものであった。もともと仏とは長い修行の末に到達するものと考えられていたが、すでに人は完成された心を備えているとする点に禅の独自性がある。しかし、この教えを実感するためには修行が必要であるとされ、宋代には規律正しい生活や坐禅、精神の集中が重んじられるようになった。この流れが鎌倉時代に日本へ伝わり、武士の生活にも適合して広まった。
円覚寺の開創に際しては、元寇の戦いの後、敵味方を区別せず供養する「怨親平等」の考えが示された。仏の光はすべてを照らし、そこに差別はないという教えであり、禅の心の広がりを表すものである。さらに室町時代には、夢窓国師らにより庭園や文化として展開し、江戸時代には盤珪や白隠らによって民衆へ広く説かれるようになった。また、どのような仕事であっても、それ自体が仏道の修行であるとする考えが広まった。
明治以降は修養としての禅が見直され、近年はマインドフルネスとしても広く取り入れられている。禅とは、自己の執着を離れ、無我の境地を体得し、慈悲をもって生きることであるとまとめられた。こうした教えは現代社会においても示唆に富むものといえる。最後は椅子に座り、姿勢を正し呼吸を見つめるイス坐禅の実践により締めくくられた。
スピーカープロフィール

横田 南嶺 老師
臨済宗円覚寺派管長、花園大学総長、
公益財団法人 禅文化研究所所長
1964年和歌山県新宮市生まれ。1987年筑波大学ご卒業。在学中に出家得度、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行されました。1999年 円覚寺僧堂師家、2010年臨済宗円覚寺派管長、2017年花園大学総長、2023年禅文化研究所所長にご就任されました。著書に「臨済録に学ぶ いかに自己を創り上げるか」「十牛図に学ぶ真の自己を尋ねて」(致知出版社)、「心とからだを調えるイス坐禅」(インターブックス)他多数。 また、法話会・講演会などにも多数出演され、YouTube「円覚寺公式チャンネル」にて「毎日の管長日記と呼吸瞑想」を配信中。