1978年からパリコレクションに参加し、22年間で44回のショーを開催しました。パリコレで得たさまざまな経験、それが私の原点です。1989年には、パリのアヴェニュー・モンテーニュにブティックを構えました。モンテーニュ通りは、そこに店があるだけで、デザイナーの名刺代わりになるほどステータスの高い場所です。
その後、ニューヨークのメトロポリタン美術館でのショーが実現しました。「この美術館でショーをできませんか」という私の突然の申し入れに、「やったことがないから、やろう」という発想で応えてくださいました。ニューヨークの自由さ、懐の深さに感銘を受けました。
さらに、世界各国でショーを開く機会に恵まれました。最も思い出深いのはキューバです。私は、キューバでショーをした世界初のデザイナーになりました。ナイトクラブ「トロピカーナ」でショーが始まる直前、ディレクターのサンティアゴ・アルフォンソさんが笑顔でおっしゃった「今は夢。明日は歴史」という素敵な言葉が忘れられません。今日のショーは明日には歴史になる。同じことをしても、“同じ”は二度とない。何事にも常に初めて臨む気持ちで向き合いたいと思っています。
コロナ禍のなか、思いもかけず時間ができたので本を執筆しました。本のタイトル『大丈夫』の3文字すべてに、「人」という文字が隠れています。「人、人、人」が大丈夫をつくるのです。仕事も人に喜んでもらえて初めて、成功したと言えます。人が集まるところには文化が生まれます。人に会うと、「おしゃれでもしようか」と元気が出てきます。人とつながり、一人ひとりが互いの個性を認め合い、違いに良さを感じることが大切なのです。出会いは人生の宝になります。
何事にも失敗はありますが、何もしないで恐れるよりも、挑戦して、前へ進むことが大事だと思います。私が常に心がけているのは、センスを磨くことです。センスとは、「感覚」「経験」「知識」「状況判断」の四つの要素が揃ってこそ、研ぎ澄まされていくものだと私は考えています。
11月23日から、あべのハルカスで「原点から現点」をテーマに展覧会を開催します。皆さんに、ファッションショーのような空間で、ファッションのもつチカラを感じていただきたいと思います。
ぜひ、お越しください。
スピーカープロフィール

コシノ ジュンコ 氏
世界的ファッションデザイナー。その生い立ちはNHK連続ドラマ「カーネーション」で描かれた。文化服装学院では在学中にデザイナーの登竜門である「装苑賞」を最年少の19才で受賞。1978年にパリ・コレクションに参加後は、世界各地でファッションショーを開催され、2017年文化功労者表彰を受けられ、2021年にはフランス政府より「レジオンドヌール勲章シュバリエ」を受章、更に2022年旭日中綬章を受章され、その業績は高く評価されている。伝統文化への造詣も深く、京都では琳派400年記念では能とファッションショーのコラボレーションを展開され、パリ市と京都市友好60周年の記念行事に於いてもパリ市庁舎で素晴らしいショーを開催された。著書「大丈夫」に著されているコシノ先生のポジティブな生きる姿勢・思考は多くの人々に元気と生きる勇気を与えている。