今年9月に発表された日本の高齢化率(全人口に占める65歳以上人口)は29.1%で、過去最高になった。わが国は高齢化率が21%を超える「超高齢社会」に突入している。
平均寿命は女性87.09歳(世界1位)、男性81.05歳(世界4位)。世界トップクラスの長寿大国だ。ただし直近は2年連続で前年を下回った。コロナで高齢の死亡者が増えたのが一因といわれている。
誰もが元気で長生きしたいと願う。だが現実には、亡くなるまでの寿命と、健康を保持して生活できる「健康寿命」には時間差がある。男性は8~9年間、女性は12年間、生きるために誰かの手を借りる必要が生じている。健康寿命を延ばすために、国もさまざまな施策を講じている。
政府が毎年、国会に提出する「高齢社会白書」には、高齢化に対する施策の実施状況や計画が分野別に示される。健康・福祉の分野では今年、「地域包括ケアシステムの一層の推進」が一貫して謳われている。2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進するとしている。
私の専門分野においては、精神疾患にも対応した地域包括ケアシステムも整備されつつあり、話題になっている。
平成23年の社会保障審議会医療部会では、各都道府県が作成する「医療計画」に、精神疾患に関する記載を盛り込むべきとされた。現在はがん、脳卒中、心臓病、糖尿病に加えて、精神疾患についても、地域で必要とされる医療を確保するための整備計画が示されるようになった。
最後に「精神保健福祉法」の第3条「国民の義務」を紹介したい。「国民は、精神的健康の保持及び増進に努めるとともに、精神障害者に対する理解を深め、及び精神障害者がその障害を克服して社会復帰をし、自立と社会経済活動への参加をしようとする努力に対し、協力するように努めなければならない」と定めている。
精神科の臨床医としての経験を踏まえ、皆様に精神疾患への理解を深めていただくお手伝いをするのも私の使命だと考えている。
スピーカープロフィール

磯野 浩 氏
医療法人 昭友会 埼玉森林病院 院長
昭和大学医学部をご卒業後、同大学精神医学教室入局。昭和大学病院等に勤務され、約20数年前から老年精神医学を専門とされる。2007年4月から埼玉森林病院副院長、2009年4月から埼玉森林病院院長に就任され、現在に至る。2004年「レビー小体型痴呆の臨床的特徴と診断基準の有用性について」にて日本老年精神医学会学会奨励賞をご受賞。著書は「認知症診断の不都合な真実」。