ロータリークラブに入会して職業倫理委員長を務めた際に、江戸時代の思想家・石田梅岩の教えと出会いました。職業奉仕の考え方について、石田梅岩の教えを通じて説明いたします。
石田梅岩は1685年に農家の次男として生まれ、厳しい家庭環境で育ちました。23歳で商家に入り、夜遅くまで勉強に励み、様々な思想を学びました。45歳で悟りを開いた後、京都で講義を始め、その教えは次第に広がっていきました。最盛期には400人もの門人がいて、死後には全国182箇所に塾ができたそうです。
梅岩の教えの核心は「先も立ち、我も立つ」という考え方です。これは取引先やお客様が立たないと自分も立たないという意味で、両者がwin・winの関係にあると言うことで、後の近江商人の「三方よし」の思想にもつながっています。また、単なる利益追求ではなく、正直・倹約・勤勉を重んじ、得た富は社会全体のものという考えを説きました。倹約の真の目的は人を助けることである、人を助けるにはお金がいるのだ、そして倹約して貯めた金銭をどのように使うかが人の値打ちに直結する、と説かれました。人が正しい行いをすれば子孫は反映し、その逆では子孫は滅ぶ。人の人たる道を皆で行えば、世界は兄弟のように和合するとも説かれました。
この思想は、現代のロータリークラブの職業奉仕の考え方とも重なります。ロータリークラブでは、職業を通じた社会への貢献を重視し、それを「ロータリーの樹」として表現しています。根っこがクラブ奉仕、幹が職業奉仕、そこから社会奉仕や国際奉仕という花が咲くという考え方です。
第二次世界大戦後、アジアの中では日本だけが驚異的な復興を遂げられたのは、石門心学の普及によるところが大きいと、ハーバード大学でも研究されています。
「入りて学び、出でて奉仕せよ」がロータリークラブの基本精神であり、ロータリークラブで活動することによって、人づくり、道徳、謙虚さを学び、これからも思いやりと心を持って職業を通じて世の中を良くすることが大事だと思います。
スピーカープロフィール

谷内 弘照 師
高雄山神護寺 貫主
1955年京都生まれ。1974年戒師亀山弘応和上に従い得度。高野山大学密教科を経て、高野山専修学院を1979年に卒業され、神護寺に奉職、2007年神護寺住職にご就任されました。京都西ロータリークラブに所属されています。例会では「職業奉仕と私~石門心学から学ぶ」と題してスピーチを、また例会後のクラブ・フォーラムでは「寺院と職業奉仕」と題してご講話を頂きます。
石門心学とは江戸時代に石田梅岩が創始した庶民のための生活哲学で、儒教・仏教・神道に基づいた道徳を独自の形で、そして町人にもわかりやすく日常に実践できる形で説かれました。そのため「町人の哲学」とも呼ばれています。