私は京都成章高校で35年間、ラグビー部の監督を務めました。今年は10年連続で花園出場を決め、3年前には全国大会で準優勝しました。なぜ強豪校になれたのか、とよく聞かれます。部員3人からのスタートでした。大事にしてきたのは5つのことです。
第一は「知る」。今の高校生のことをよく知ることです。部員は現在、107人いますが、1人1人求めていることがみんな違う。去年と今年の生徒も違います。
第二に「まずやってみる」。ラグビーの合宿所として知られる菅平高原で、高校生の日本代表が練習すると聞いて、30万円以上するビデオカメラを買い、グラウンドで練習を盗撮したこともありました。最初は不審に思われましたが、合宿のミーティングに呼ばれて貴重な資料をもらったり、翌日はコーチングをさせてもらったりしました。得難い経験でした。
第三に「人を巻き込む」。今、ラグビーのトップリーグで成章の卒業生が20人余りいます。それぞれが所属するチームのいいとこどりをして、成章に一番いい形で還元しようと卒業生が教えにきてくれています。
第四に「継続」。10年ほど前に癌になりました。ステージ4で遺言も書きました。今、こうしてお話できるようになったのは奇跡です。癌になったおかげで、子供たちのペースに合わせられるようになりました。自分はせっかちな性格だけど、話を聞いてやれるようになりました。そしたら子供たちがゆっくり成長してくれました。
そして何より大事にしてきたのは「意地」です。ピンチこそチャンスだと。たとえば成章のラグビー部はグランドを週に2日しか使えません。強豪校の中ではおそらくもっとも少ない。だけど週に3日は体づくりにあてることができる。そんな風に、マイナスの中にプラスを見つける態度が身に付きました。
「自分たちの未来は自分たちで作る」をチームの合言葉にしてきました。ハーフタイムでも私は輪の中に入らず、生徒だけで話し合います。自分で考え、仲間に協力を求め、目の前の問題を解決していく、ということが大事だと思っています。
スピーカープロフィール

湯浅 泰正 氏
京都成章高等学校 校長
1964年、京都府でお生まれになり、亀岡高校、琉球大学を経て1987年に京都成章高校ラグビー部の監督に就任。指揮官としてラグビー全国大会10年連続16回目出場決定を成し遂げ、京都成章高校を全国大会準優勝2回(2021年 花園大会1回、2017年 選抜大会1回)の実績を誇る強豪校に導かれました。2023年より京都成章高等学校の校長に就任されています。