
南座でお芝居をさせていただくため、明日から舞台稽古に入る。一緒に出る藤山直美さんは「お姉ちゃん、南座ですよ。南座が一番怖い」と言っている。京都の方は「ほんまもん」を見ておられるので「にせもん」は見抜かれる。
伝承してきているものは、つらいことをいっぱいしていかないといけない。守るだけでもだめやし、時代、時代でちょっとずつ変えていく必要がある。私が生まれた年に書かれた台本だが、それをよく考えた現代劇になっている。
私は大阪生まれ、大阪育ち。父は文楽の人形遣い、二世桐竹勘十郎。弟は三世桐竹勘十郎。弟の息子は吉田簑太郎。孫が今年、桐竹勘吉という名前で弟の弟子になった。親子四代になる。世襲ではない文楽では非常に珍しい。
最近は弟子に怒ることができない風潮がある。私らはものすごく怒られてきた。こんなんで上手になるのかなと心配している。
京都は厳しさの中で伝統をちゃんと守っている。時代祭に出る方の髪の結い方について、テレビでベテランの美容師さんがぼろくそに言われていた。花柳界は毎日きつい稽古をして、それを支える男の人もいる。京都はいろいろなことがちゃんと残っていて、プライドも持っている。それが一番わかるのが言葉だ。
大阪で正しい大阪弁を話せる人は、もうほとんどいない。全国から(お笑いの世界に)来て大阪弁らしきものを電波で発信している。桂米朝師匠がいてはる時は「米朝一門の落語を聞きなさい」と言えた。京都の子はプライドが高いから絶対に崩さない。神戸も神戸弁を話す。
日本の良さを守るのは難しいことだけど、古典をつなげる伝統芸能には残っていく。外国へ行くなら、文楽や歌舞伎、お能、狂言など、3 回ずつナマで全部見てほしい。10 回ずつ見るべきだという人もいる。京都や大阪、東京など都市に住む人ならそれができる。
自分の国のことを知らないで、外国でミュージカルやオペラ、バレエを褒めたって「この日本人、信用できない」と思われる。社員や息子さん、お孫さんに「日本のことがわかってから外国に行けよ」と言ってあげてほしい。
スピーカープロフィール

三林 京子(桂 すずめ)氏 (みつばやし きょうこ・かつら すずめ)
女優。NHK児童劇団をご卒団後、山田五十鈴氏のもとで付き人修行を始め、東宝演劇部と専属契約を締結後芸術座「女坂」瑠璃子役で初舞台、NHK大河ドラマ「元禄太平記」のおとき役でテレビデビューされました。ゴールデンアロー新人賞、日本映画・テレビ製作者協会賞を受賞された後、桂米朝師匠に師事され「桂すずめ」の名前を受けられました。社会活動としては、大阪市いちょう大学(高齢者大学)初代学長、大阪府教育委員等のお役職を歴任し、令和3年には、大阪市市民表彰文化功労章を受賞されました。数々のテレビドラマにもご出演されており、最近はインスタグラムにも注力中です。